2017年07月21日

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫) 文庫  本谷 有希子 (著)



腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫) 文庫  本谷 有希子 (著)

※ネタバレありです。

この本はなかなか内容に癖がありましたけど面白かったです。
本谷氏は、舞台作家なんですね。
ちょっと内容が過激というか極端というか、そんな印象があったんですけど、
舞台演出などの影響かもしれません。

で、ストーリーはというとですね、
「自己愛性パーソナリティ障害」という病気がありますが、
巷でもそれらしき人は見かけられます。
自分が可愛くて仕方がない。自分は特別な何者かである、と信じて疑わない人です。
主人公の姉もこの気があって、
さほど演技力もなく美貌もない女性なのですが、
自分は女優の才能があると信じて疑わなく、
高校の文化祭で自分の演技を同級生が笑ったのは、
自分に対する嫉妬だと思い込みます。そして、
自分が認められないのは、自分の才能を理解しない周囲に問題があると決めて
様々なトラブルを起こします。

女優の夢を親から反対されたために、
上京するための費用を同級生に援助交際して稼ぎます。
また、自分の能力を否定するようなことがあると、
キレてナイフを振り回すこともあります。

また、自分のが唯一の存在であることを確認するかのように
妻のいる腹違いの兄とも関係を持ってしまい、自分以外を愛さないようにと命じます。
彼女は、自己愛を満たすために周りを支配下においてコントロールしようとするのです。

そして、主人公である妹は、姉のように顔立ちもよくなく、何かになりたいという野心もありませんが、
ただ、そんな気違い染みた姉の存在を、漫画にしてみんなに知ってもらいたくてたまらない、
という衝動に駆られます。そして、その漫画は入選してしまい、
姉の奇行は小さな村の皆が知るところとなるのです。

姉は自己愛の塊で非常に恐ろしい性格ではありましたが、
兄は、家族の幸せのためなら自分はどうなっても良いという過度の自己犠牲の精神を持っています。
そして、伴侶である妻よりも家族が幸せになるための行動を取ってしまいます。
そして主人公は、自己主張は全くと言っていいほどせずに従順ではありますが、
恐ろしく冷静に病的なほど人を観察することに長けています。

最後には、周りを振り回して、自分自身をもボロボロにしてまで女優になりたい、
女優になれると信じて疑わなかった姉に対して
あなたは、女優ではなくお笑いの方が向いている。
どうしてこの面白さに誰も気がつかないのか、と冷静にいうわけです。

人間が誰もは持っている負の部分を強烈に発揮するキャラクターは
少し不快感がありましたが、色々と考えさせられる小説ではありました。
posted by さとし at 19:46| 京都 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書・映画・芸術など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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